体外受精とはヒトの卵子を体外へ取り出して体外で受精卵をつくり、それを子宮に戻す治療です。通常、卵管内で起こる受精現象を体外でできるようにしたものです。もともと卵管が原因の不妊症治療として始まったものだが、男性不妊をはじめ、その他の原因のものまで適応が拡大されてきました。
周期当たりの妊娠率が一般不妊治療に比べ高いのが利点であり、通常原則1個胚移植し、多胎予防できるとともに、受精卵を凍結すれば1回の採卵で複数回の胚移植も可能です。
欠点としては、日本では保険適用が無いため費用が高く、過排卵刺激による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が副作用として取り上げられていますが、刺激法の多様化、進歩により大きく改善されてきました。また、体外培養技術も進歩し、胚盤胞培養も技術が向上し成績も向上しています。
受精卵をつくるための通常の媒精は、卵子1個に運動良好精子5~10万個を1つの容器に入れて、受精を期待します。
受精から16~18時間後、25時間後、2~6日後まで培養し、発育状態を観察します。
原則として、胚移植1~回目は2日目(4細胞期)か3日目(8細胞期)を1個、それ以降は5~6日目(胚盤胞)を1個移植します。
女性年齢や治療回数に応じて2個まで移植可能です。子宮筋腫や帝王切開の既往がある場合は1個移植とされています。
凍結胚の質が不良でなければ、高いエストロゲン、プロゲステロンにさらされていないホルモン補充周期や自然周期の子宮内膜のほうが、卵巣刺激周期の子宮内膜に比べ受精卵の受容能が高く、着床率が高くなります。
卵巣刺激して採卵した周期は、子宮内膜の発育速度が胚の発育速度より選考する場合が多く、良好胚を移植しても着床率が低下します。
凍結胚移植の場合は、子宮内膜と胚の発育速度が一致するので着床率が高いです。
最近では原則、単一胚移植が主流なので、ますます凍結胚移植のニーズが高まっています。
胚移植する医師の技量が低いと妊娠率は低下します。胚は、子宮腔内に注入する必要がありますが、移植カテーテルが所定の位置に届かなかったり、カテーテルの先端が子宮内膜に埋もれた状態で胚を注入すると、移植ロスとなり、あるいは胚破損の原因となり、着床率が低下します。
胚移植は、一般に子宮底から1~2cm手前に注入することがもっとも妊娠率が高いといわれています。
ある程度技術的に習熟している医師であれば、大きな妊娠の差は無いといわれています。
胚移植後の安静は特に必要はないというのが一般的な考え方になっています。体外受精が始まった当初は、胚移植後は妊娠判定までベット上安静を行っていた施設もあったと言われていますが、その後徐々に安静時間が短縮され、現在では胚移植後の安静時間と妊娠率には関連がないとされています。